最近、SNSやニュースで「夫婦別姓」の話題をよく目にする。
正直、僕自身は制度そのものに強いこだわりはない。
「別姓を選びたい人は選べばいい」と思う派だし、変えたくなければ今ある制度の中で結婚しなければいいだけの話だ。
でも——この議論を見ていて強く感じることがある。
それは「議論の空気の幼稚さ」だ。
1. 議論が「感情のぶつけ合い」になっている
本来、国の制度を変える話し合いは
- 問題点を整理し
- 合意点を探り
- より良い仕組みを作る
ためのもののはずだ。
でも実際はどうだろう?
SNSやメディアで目立つのは、冷静な対話ではなく感情的な言い合いだ。
- 相手を罵倒するような発言
- 論理ではなく感情で主張する
- マウントを取り合う構図
これでは建設的な話し合いではなく、ただの「口喧嘩」でしかない。
2. 「思想が強い人」だけが目立ち、議論が歪む
制度を変えたい側には強い主張がある。
彼らの情熱があるからこそ、議題が浮上するのも事実だ。
だがその分、声のトーンが強くなりがちで、冷静な慎重派の意見はかき消されやすい。
メディアもSNSも、感情的な主張や過激な発言の方が拡散されやすい構造になっている。
だから冷静な声があっても、目立たない。
結果、議論は「極端な賛成派 vs 極端な反対派」の構図になり、中間の声が消えていく。
3. 「別姓」そのものは大問題ではない
そもそも夫婦別姓の制度そのものは、海外では珍しくない。
日本は文化的背景が異なるためそのまま真似るのは難しいが、だからといって「制度を変えなくていい」という理由にはならない。
少なくとも中長期的に選択肢として整備する価値はある。
ただし、導入には行政システムの改修や法整備に費用がかかる。
少子高齢化や移民政策など、他に優先すべき課題が山積している現状では、今すぐやるべきではないという慎重派の意見も筋が通っている。
4. 問題は「制度の是非」より「議論の質」
僕が一番強く思うのはここだ。
夫婦別姓の是非は、冷静に議論すれば答えを出せる問題だと思っている。
ところが現状は、
- 「勝ち負け」で話そうとする
- 相手の主張を聞く姿勢がない
- 感情で相手を叩く
という構図で、「制度の中身」を話す以前の状態になってしまっている。
国の法制度を議論する場で、感情まかせの発言ばかりでは前に進まない。
お互いを“敵”ではなく、共に社会を良くしていく仲間として議論できる空気が必要だ。
5. 「冷静な中間層」の声が必要
世の中には「賛成派」でも「反対派」でもない、
「別に反対ではないけど、優先順位は低い」という人がたくさんいる。
僕もその一人だ。
この層は普段、声をあげない。
でも実は、この「冷静な中間層」の視点こそが、制度設計にとって一番現実的で価値がある。
制度は思想や感情ではなく、現実とのバランスで作るべきだからだ。
6. 比喩:エンジニアとクライアントの会話に置き換えると
いまの議論の空気は、長年安定稼働しているプロダクトに「他社が入れた機能」を感情で“今すぐ”ねじ込もうとする状況に似ている。
クライアント:「他社はこの機能つけてる。うちにもすぐ実装して!」
エンジニア:「いきなりは無理です。その1機能のために設計全体を見直し、想定バグを洗い出し、段階移行の計画を立てる必要があります。拙速に入れれば大規模障害やセキュリティ事故、既存秩序の崩壊につながる可能性もある。“やる/やらない”の前に、冷静な要件定義と合意形成が必要です。」
ポイントは3つ。
- 要件定義:目的・前提・影響範囲を言語化して、そもそも何のための変更かを明確にする。
- 影響評価:技術的負債、既存データ、周辺システム、ユーザー体験への影響を洗い出す。
- 段階導入:パイロット→限定リリース→監視→本番拡大、という計画的ロールアウトでリスクを最小化する。
政策も同じだ。
「他国がやっているから」だけで導入を急げば、思わぬ副作用を招く。
実装(制度化)自体は可能でも、慎重な要件定義と段階導入が不可欠。
感情でスイッチを押すのではなく、論理と手順で前に進めるべきだ。
7. まとめ:社会を変えるのは「声の大きさ」じゃなく「議論の質」
- 感情で制度を変えるのではなく、冷静に合意形成をする
- 「思想が強い人」だけでなく、中間層の声を反映させる
- メディアは煽る報道ではなく、議論の質を高める方向へ
- そして、賛成でも反対でも「相手を受け入れる姿勢」を持つ
- 制度導入は“実装プロジェクト”。要件定義・影響評価・段階導入で安全に進める
法制度を変える議論は、家族会議ではない。
国の未来をつくる話し合いだ。
だからこそ、感情よりも「理性」と「対話」が必要だと思う。





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